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ブロードウェイに挑戦する渡辺謙より観るヨガの本質
NHKの番組「プロフェショナルの流儀」で、世界のエンターテイメントの頂点、ブロードウェイミュージカルの主役に挑戦する渡辺謙さんの密着取材から、ヨガの本質が見えました。
全てゼロにして自分を追い込む
ただでさえ英語が母国語でない日本の俳優が、世界でもっとも厳しい評価にさらされる、ブロードウェイミュージカルの主役に挑戦。
それも、その演目が「王様と私」という、かつての名優ユリ・ブリンナーが演じた、誰もが認めるミュージカルの王道。
その姿は、現状に甘んじること無く、絶えず全てゼロにして、断崖絶壁の状況であがく様子でした。
カメラの前では、そんなプレッシャーに闘いながら、彼は自分と静かに向き合い、自分の弱さを認めながら、苦戦苦闘する姿をさらけだしていました。
彼曰く俳優という仕事は、新しい役に挑戦する時、それまでのキャリアや名声を全てを捨て、あたらしく役を創り出すものと言っていました。
今ぐらいの名声があれば、日本で豪邸でも購入して、数本のCMに出れば安楽な生活もできますが、渡辺謙さんの選択肢にはそれが無かったようです。
この役者に対する人生観は、人間は輪廻転生して、魂は引き継がれていくというヨガの考え方と、全く同じであると感じます。
人は一生でいくら財産を築き名声を得ようとしても、死んでしまえばすべてはゼロになり、生まれ変わり、またゼロから人生が始まります。
俳優という仕事は、それを一生の中で、仮想的に体験できる職業でもあると感じます。
あらゆることを実践して、そして捨てろ!
また彼の役づくりのポリシーが、とにかく思いついたことや感情を素直に出し、あらゆることを柔軟に試し実践すること、そして、その結果を捨てること。
謙さんは、一つのシーンでも、主人公のあらゆる感情表現を次から次と試し、そして捨てていきます。
この考え方は、ヨガでいうところのカルマヨガの本質でもあります。カルマヨガとは、日常の行動を通して、自らの業を解き放つものです。
ヨガで一番大切なことは実践です。あらゆることを経験し実践することで、始めて自分自分が何者であるがが判ります。
そしてそれによって始めて、自分自身を苦しめている自己の束縛が理解でき、それを捨てることが出来るのです。
その為に自分の奥底に眠る欲望を一度表面に出さなければ、それを捨て去ることは絶対にできないのです。
NHKの取材に対して、恥も外聞もなく、全てをさらけ出して世界の頂点を極める謙さんの姿は、ヨギそのものでもあります。
24時間のすべてが演技に捧げられている
役者とは、舞台で演じているだけの時間が仕事ではなく、24時間のすべてが仕事であると謙さんは言っています。
ニューヨークのアパートで、忙しい舞台稽古の中、一人自炊をして米を炊き、身体を鍛えている姿は、まさに修行僧のような生活でした。
しかし、その全ての時間が、彼にとって非常に大切で濃厚な時間であることが、カメラ越しからもとても良く伝わってきました。
これほど精一杯に生きることができれば、他人からは辛そうに見えても、本人は充実した人生を歩んでいることでしょう。
ヨガもマットの上でポーズの練習をすることがヨガなのではなく、生活全てがヨガであり、その時 人は始めてヨガの本質に触れることができます。
その為、マットの上で難しいポーズをとっているヨガ人より、渡辺謙さんのように、毎日を一所懸命生きている人の方が、はるかにヨガ人と言えます。
結局のところ、ヨガとはいかに人生をより良く生きることであり、その意味では誰もが、ヨガを必要としていると思います。
与えられた環境でベストを尽くせ
1987年NHKの大河ドラマ「独眼竜正宗」で、若干27歳にしてトップスターの仲間入りをしたものの、白血病を患い生死のふちを歩く。
俳優としてのキャリアも落ち目となり、毎日の生活にも困窮の極みを味わい、すべてを失う経験をした謙さん。
しかし、そのような絶望的な状況で、2003年に英語も出来ないのに、ハリウッド映画「ライトサムライ」のオーデイションを受け、一躍世界にその名を知らしめます。
そんな経験をした彼が、「プロフェショナルの流儀」で、自らを次のように語っています。
「あきらめないことだよね。とにかく何があろうとが
与えられたものに関してはあきらめないこと。
その与えられた環境の中で、与えられた自分の状況の中で
ベストを尽くすということ。それができるかできないか。
ということじゃないかなと思いますね」
その姿は、泥のの中より芽を出して、水面で美しい花をさかせる蓮のように、圧倒的輝きを放っています。
番組最後では、その彼の努力が報われ、ブロードウェイミュージカルの頂点、今年のトニー賞にノミネートされたことを伝えています。
派手さのない、毎日の坦々とした生活の積み重ねこそが、本当の意味での成功の近道と言えるでしょう。
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