私のヨガクラスで毎回非常に熱心に練習をしている生徒さんから、「先生、向上心を持つと言うことは邪念を持つことなのですか?」と聞かれました。
突然どうして、そんな切羽詰まったような感じで質問してきたのか聞いたところ、「ヨルタモリ」という番組でタモリさんがそう言っていたとのことでした。
○「ジャズな人」と「ヨガな人」
その真相を調べるべく、5月10日に放送された「ヨルタモリ」という番組の内容を見たところ、確かにタモリさんはそのように言っていました。
ことの発端は、ゲストの草なぎ剛さんとジャズについて語り始めところから始まっていました。
普段からジャズ愛好家タモリさんは、人を「ジャズな人」と「ジャズでない人」に区別して、次ように語ります。
「向上心がある人は、今日が明日のためにあるんだよ」
「向上心がない人は、今日が今日のためにある」
「向上心=邪念てことだよね」
つまり、今日が今日のためにあることが大切であり、今日が明日のためにあることが、問題であるとのことでした。
ジャズは即興性の芸術なので、今この瞬間に集中しないと成立しないものであり、この観点でタモリさんが言っている「ジャズな人」とは、今に生きる人を指しているのだと思います。
しかしこの視点は、ヨガでも最も大切で、今この瞬間に生きることが自分の束縛を解くカギになるとする「カルマヨガ」の本質と共通しています。
「カルマヨガ」とは、自分の今の行為に集中することを大切にして、その行為によって将来得られる結果に執着しないことです。
ヨガの練習も、ポーズをとることにこだわり過ぎて、今この瞬間に集中できず、自己嫌悪に陥る人がいます。
しかし、それはタモリさんの言うところの「邪念」であり、そのような状況では、ヨガにおいても本当のヨガの恩恵は得られません。
つまり、ヨガの世界においても、「ヨガな人」と「ヨガでない人」が居るということになります。
○今この瞬間に生きる大切さ
ヨガとは、経典「ヨガスートラ」で「心の動きを止めることである」と説かれています。
なぜ心の動きを止めることが大切かというと、人は心の動きに囚われ、自己の束縛を生み出し、それによって苦しみを感じるからです。
一口に心の動きを止めると言っても、具体的にどのようにすれば良いか疑問を持たれる方も、いらっしゃると思います。
ヨガでは、心の動きは時間の中で生じていると考えます。つまり、心が過去の事について考えたり、未来のことについて考えたりしている時が、心が動いている状態なのです。
それ故に、その心の動きに囚われないようにするためには、「今この瞬間」に集中することが大切なのです。
何か好きなことを無我夢中でやり、時間を忘れて没頭した経験は、誰にでもあると思います。
その状態こそが、ヨガで言うところの「心の動きを止めること」なのであります。
そしてその状態を創りだすためには、人は何らかの行為を実践する中で、今この瞬間に集中することが大切となります。
番組でタモリさんは夢を追っている人の問題として、「夢の達成される前の期間は、全く意味のないつまらない期間になる」と語ってます。
そして、「一芸を成し遂げた人は、何かに夢中になっていただけで、夢を持っていた訳ではない」と続けます。
つまり今この瞬間に集中することで、過去や未来に心がさまようことが無くなり、自分自身を束縛させているものから解放されていくのです。
○ヨガの本質は純粋な行為
それについてヨガの教えでは、実にシンプルで単純明快に説明されています。
それは、自らが行動を起こし、その行為そのもに集中するだけでいいのです。
人間、行動を起こさず何もしないでいると、心は動きまわり、色々な心配や不安が次から次に生まれてくるものです。
しかし、誰もが仕事でも、趣味のことでも、それに対して実際に行動を起こしてみると、意外とそうした不安が消える経験をしたことがあると思います。
つまり、「今この瞬間」に集中するとは、行動を起こすことによって得られる状態なのです。
その為「夢」を自分の心の中で描くだけで、実際に行動を起こせない人は、心が今この瞬間に集中することはできないのです。
インドのサンスクリット語で「カルマ」とは、「行動する」という意味になります。
そして、「カルマヨガ」とは、自ら純粋に行動を起こし、それに集中することで、本当の心の平安を求めるヨガの実践方法なのです。
インド独立の父ガンジーが愛読したインドの聖典「バガヴァッド・ギーター」では、「カルマヨガ」について次のように書いてあります。
「行為に純粋に専心した者は、行為の結果を捨て、究極の静寂に達する。行為に集中しない者は、欲望のままに、結果に執着して束縛される。」
バガヴァッド・ギーター 第5章12節
一般的にヨガと言うと、何かストレッチをする運動だと思っている人が、とても多いと思います。
しかしヨガの本質は、人生をより良く生きる為の教えが説かれているものであり、その考えは、ヨガをされていないタモリさんでも持っているのです。
つまり「ヨガ」とは、誰もが、いつでも、どこでも実践できる、人類の叡智であると言えるでしょう。
Youtubeサイトにて音声解説もUP致しました。
是非ご視聴下さい。
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