自分を映し出す鏡とは ~ヨガと仕事の関係~


女性の重要な道具として、毎日身だしなみを整える鏡は大切なものでしょう。自分の姿は、自分では決して見ることができないものです。しかし、人生を生きる上で、最も大切なのは自分自身を知ることなのです。
 

○会社の仕事とヨガの両立

私は、ヨガインストラクターでは珍しく、会社でシステムエンジニアの仕事をしながら、ヨガのインストラクターを続けて、もう10年以上となります。

先月は会社の仕事が非常に忙しく、連日会社を退出するのが夜の11時過ぎとなる日々を送り、1日12時間以上もパソコンに向き合っていました。

そんな中でも、週末を中心にヨガクラスをおこない、平日も出勤前に朝ヨガクラスを銀座のヨガスタジオで終えて、出社して夜遅くまで仕事をしおります。

どんなに忙しくとも、毎日のヨガの練習と瞑想は実践して、その上ヨガスタジオでヨガを教える生活を両立させています。

しかし、職場ではヨガの話をする事は一切なく、自分がヨガをしていることも話しません。ましてや、ヨガのインストラクターであることも明かすことはありません。

このようにお話しすると、ヨガと仕事は別物として、自分は考えているように思われる方もいるかもしれませんが、実際は全く逆で、私にとって真の意味で日常生活がヨガそのものなのです。

なぜならば、自分にとっての本当のヨガの実践の場は、普段の会社での職場であり、ポーズ練習や瞑想は、それに対する準備であると言うことです。

つまりヨガのポーズ練習や瞑想によって、身体とこころを整えて、より良い状態にすることによって、様々な経験をすることが人生を本当の意味で豊かにするのです。

 
私がヨガを始めた20年前は、オウム真理教事件の直後でヨガ業界は正に氷河期で、クラスで「オーム」と唱えることもできない雰囲気でした。

そんな中で、10年近く前にヨガブームが世間で起こり、当時私はIYCでアシュタンガヨガの練習をしていて、ケンさんからヨガインストラクターのオファーがあり、インストラクターの活動を開始しました。

そうした流れで始めたのがヨガインストラクターの活動なので、今でもヨガインストラクターの活動が目標ではなく、ヨガを実践することを1番大切にしています。

 

○ヨガの真髄は行動と実践

ヨガの聖典「バガヴァッド・ギーター」で、主人公アルジュナに対して、神の化身であるクリシュナが、行動を起こして自分の義務を果たすことを説いています。

瞑想することよりも、先ずは行動を起こすことが大切なのです。この「行動」をサンスクリット語で「カルマ」と言います。

ヨガで「カルマヨガ」とは、行為行動を通じて、自分自身の本質に至る方法が説かれているものです。

なぜ、瞑想することよりも、実践することが大切なのでしょうか。

それは、自らが実践することによって、初めて自分自身を苦しめる執着や間違ったものの見方が解消されるからです。

我々は行動を起こすことによって、様々な人々と巡り合い、色々な体験をして、失敗したり辛い経験をして、始めて自分自身が見えてくるのです。

私は学生時代、禅やインド哲学に大変興味があり、瞑想などもしておりました。しかし、そうしたことをしても、実際の社会経験をしないで、頭で考えても進歩しないと考えていました。

その為文系でしたが、就職したのはコンピュータ業界でした。なぜコンピュータ業界を選んだかというと、様々な業種の様々な会社を見ることができることが理由でした。

コンピュータ業界というのは、コンピュータの知識を身につけることはもちろんですが、それ以上にそのコンピュータを使うユーザーの業務を勉強しなければ、仕事にならないのです。

その為、様々な業種の様々な会社を経験することができました。業界や会社が違うと、社風も全く違うので、プロジェクトが変わる毎に転職しているようなものでした。

その中で、20代後半では、とある飲料メーカーの本社で大型汎用の保守責任者をしていた時、コンピュータがダウンしてしまい、物凄いプレッシャーの中で原因を解明して、コンピュータを回復させたこともありました。

そうかと思えば、プロジェクト全体の計画が遅れ、数ヶ月 毎日夜中の午前過ぎまで仕事をしたこともありました。

そうした仕事での修羅場の経験を経てきましたが、今思い返すとそうした経験をすることによって、本当の自分が見えてくると感じています。

 

○すべての原因は自分の中にある

ヨガの哲学では、すべての原因は自分の中にあるとする考え方があります。

そして、カルマとは過去生において自分が作った原因が、現象として現れたものであるとしています。

自分のこころは実際に目にすることができないので、いくら物理的な鏡によって自分を写したところで、見ることはできません。

それでは、どのようにして自分自身を把握することができるのでしょうか。

それは日常生活で体験している現象が、すべて自分を示しているので、今自分が体験しているできごとを観察することで、自分自身を理解することができます。

カルマとは、行為を意味しますが、なぜそのような行為をするかというと、自らの内側にある欲望があるからです。

私自身、これまでの様々な経験することで、始めて自分の内側にある目に見えない欲望やプライドや驕り、そして自分自身の器を知ることができました。

しかし、もし何も行動を起こさなければ、経験を通して得られる自分自身の姿を理解することは、無かったでしょう。

それ故に、ヨガで何よりも大切なのは、行動を起こして、様々な経験をすることなのです。

その為、ヨガのポーズの練習や瞑想は、行動を起こして実践することで、自分自身を映し出す鏡を得て、自分自身を理解する準備として必要なのです。

ですから、ヨガの本当の目的は、ポーズの練習や瞑想によって整えられた身体とこころを使って、様々な体験を深めて、自己認識を深め、自分を束縛する偽りの自分を解き放つことなのです。


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この記事の著者

ユキオスダルシュナヨガ主宰

ヨガ歴20年、ヨガ指導歴13年。日本で最も有名なアシュタンガヨガスタジオIYCほか、国内著名ヨガスタジオ、スポーツジムにて指導経験を積む。取得した指導者養成資格多数。近年は、ヨガ哲学をテーマにワークショップを数多く開催する一方、ティーチャートレーニングにて後進ヨガインストラクターの育成にも力を注ぐ。

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