アシュタンガヨガの極意・ドリシュティ(視点)


アシュタンガヨガで大切な三つの要素を、サンスクリット語で「トリスターナ」と呼びます。

具体的には、ウジャイ呼吸とバンダとドリシュティの三の要素をお互いに深め合うことによって、アシュタンガヨガの練習は、初めて動く瞑想となるのです。

アシュタンガヨガは、呼吸と連動して、ダイナミックに連続してポーズを取るので、肉体的な面に注目されがちです。

しかし、その目指す所は、ヨガ・スートラの解く、こころの静寂なのです。ですから、動く瞑想なのです。

身体は台風が吹き荒れるようにエネルギッシュに躍動しますが、こころは台風の目のように、穏やかに晴れ渡っているのです。

そして、そうした状態を作り出すのに必要不可欠なものが、「トリスターナ」なのです。

呼吸とバンダについては、巷でいろいろ説明されていますが、ドリスティの内容と目的については、軽視されがちなので、その本質を説明しようと思います。

 

○ 視点の動きと心の動き

心の動きと目の動きは、連動します。心が落ち着きない人は、目をキョロキョロさせることが多いです。

しかし、落ち着いている人は、視点が定まっており、乱れることがありません。

現代心理学では、脳の働きと視線の動きについて、神経言語プログラミング(NLP)の中で、視線解析(アイアクセシングキュー)がされています。

神経言語プログラミングとは、1980年代にジョン・グリンダーとリチャード・バンドラーによって研究され、現在は心理療法・自己啓発・コミュニケーション術として利用されています。

その研究結果によると、視線の動きと脳の動きには、以下の関係性があるそうです。

 
右上 ⇒ 視覚的創造
右  ⇒ 聴覚的創造
右下 ⇒ 身体感覚

左上 ⇒ 視覚的記憶
左  ⇒ 聴覚的記憶
左下 ⇒ 内部対話

 
例えば「昨日の晩ご飯は何を食べましたか」と質問します。

相手が左上を向いていれば、晩ご飯の視覚的記憶を呼び出しています。

また人は未来を想像する時は右を見て、過去の記憶を呼び出す時に左を見ます。

ヨガでは古来より、視点の動きとこころの動きに関係があることが知られており、それをヨガの練習に応用しているのです。

その為、ドリシュティによって、視点を固定することで、こころの動きを止めることを目的としているのです。

 

○ アライメントの適正化

アシュタンガヨガの練習では、その視点が以下の9つが定義されています。

 
1.ウールドヴァ(Urdhva)or アンタラ(Antara)…上方、天空

2.ブルーマディヤイ(Brumadhye)…眉間、アジュナチャクラ(第三の目)

3.ナサグライ(Nasagre)…鼻先。最も多く使われる。

4.パールシュヴァ(Parshva)…右側、右方遠く

5.パールシュヴァ(Parshva)…左側、左方遠く

6.ナビ・チャクラ(Nabhi Chakra) or ナーボウ(Nabhou)…へそ

7.ハスタグライ(Hastagre)…手

8.アングシュタマディヤイ(Angushthamadhye)…親指

9.パダヨラグライ(Padayoragre) or パーダングシュタ(Padangushta)…つま先

 
視点を固定することによって、こころのコントロール以外に、アーサナのアライメントを整える役割があります。

たとえば、下を向く犬のポーズとして知られている「アド・ムカ・シュヴァーナーサ」は、ナビ・チャクラで、おへその方を見ることで、自然とムーラバンダとウディヤナバンダが入るようになります。

視点を固定することで、こころの効果だけではなく、身体の姿勢を整える働きものあるのです。

 

○ ドリシュティの極意

巷の本やインターネットでは、ドリシュティの9つの名前と場所を説明していますが、ほとんど本当の極意の説明が不足しています。

それは、その視点を凝視してはいけないということです。

つまり、視点は固定しますが、対象を凝視するのではなく、視野は限りなく広げるということです。

凝視するのと、視点を固定して視野を広げるとでは、何が違うのでしょうか。

それは、身体に流れるエネルギーの質と量が、全く異なったものになります。

具体的には、凝視してしまうと身体全体に緊張が入り、意識は手足を中心として、その視線の対象物に囚われてしまい、エネルギーの流れが局所的に限定されてしまいます。

一方、視点だけは固定して視野を全体に広げると、身体の緊張が解け、身体の動きも、身体の中心である仙骨からエネルギーが広がるように、身体全体に満ちていきます。

このようになると、無駄に力むこと無く、アーサナの動きも非常にスムーズとなり、静かな雰囲気の中で、ダイナミックなポーズが取れるようになるのです。

これは、武道の世界でも、「八方目」として知られており、宮本武蔵も「五倫の書」の「水の巻」で,兵法の極意として説明しています。

 
「観」〔かん〕と「見」〔けん〕の二つの事、

「観」の目は強く、

「見」の目は弱く、

 遠い所を近く見、

 近い所を遠く見ること、

 これが兵法の第一とすべきである。

 
 敵の太刀を知り、
 
 少しも敵の太刀を見ないということ、

 それが兵法の真髄である。

 これを工夫してみなさい。

 目の玉は動かずに両脇を見ること、

 それが肝要である。

 
 この文書に書いてあることを覚えて、

 つね日頃、この眼付けになって、

 何ごとにも眼付けの変らないところ、

 それを、よくよく吟味しておくべきである。

 
しかし、この視点に関する極意は、ヨガの練習や武道の世界にとどまるものではなく、我々の人生の生き方にも当てはまるのです。

エゴ(我)によって、日常生活で目先のことに囚われ、執着してしまうと、アートマン(自己の本質・魂)からのエネルギーを受け取ることができなくなるのです。

 

 
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この記事の著者

ユキオ

ユキオスダルシュナヨガ主宰

ヨガ歴20年、ヨガ指導歴13年。日本で最も有名なアシュタンガヨガスタジオIYCほか、国内著名ヨガスタジオ、スポーツジムにて指導経験を積む。取得した指導者養成資格多数。近年は、ヨガ哲学をテーマにワークショップを数多く開催する一方、ティーチャートレーニングにて後進ヨガインストラクターの育成にも力を注ぐ。

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